シネマライフ・キングダム

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「ファニーゲームUSA」“映画史上最も不快な作品”のハリウッドリメイク。豪華キャストだが、97年版の方が良かった。

 原典版の「ファニーゲーム」は観たのですが、このハリウッドリメイク版の「ファニーゲームUSA」は初めて鑑賞いたしました。豪華キャストは嬉しかったし、悪趣味な内容についても、まぁ、そういう映画なので批判するつもりはありません。しかし、後述しますが、97年版の方が良かったかな、と言うのが正直な感想です。

 

 

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評価:3.0(微妙な映画)

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ファニーゲームUSA

公開:2008年(アメリカ)

監督:ミヒャエル・ハネケ

キャスト:ナオミ・ワッツティム・ロス、他

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※ 重大なネタバレを含んでいます!

 

97年版のファニーゲームについて

 まず、この映画の原作(?)である「ファニーゲームについて。この映画は1997年オーストリアで公開されたバイオレンススリラー映画です。カンヌ映画祭で上映された際、あまりの不快な内容に会場が騒然とし、賛否両論、有名になりました。監督・脚本を務めたのはのちに「白いリボン」、「愛・アムール」で2年連続カンヌ映画祭パルムドールを受賞した、ミヒャエル・ハケ。(全然作風が違っていて衝撃的です。)

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映画史上最も不快なストーリー

 そして、この作品の「映画史上最も不快」と言われるストーリーについて。別荘でバカンスを楽しむ3人家族のもとに「卵をもらえないか?」と真っ白な服装になぜか手袋をした男2人組が訪ねてきます。

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 最初は好青年だった2人ですが、突如態度が急変。そのあとは、2人組の男が家族をじっくりといたぶる様子を1時間50分間たっぷりと見せられます

 被害者に一切の反撃は許されず、ただいたぶられるだけいたぶられた3人家族は全員死亡。2人組の男はまるで一仕事終えたかのように、次のターゲットの家族に卵を借りにいくシーンで終幕です。

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 残虐な映画は数多くありますが、この映画の中でスプラッター描写があったり、レイプシーンがあったりすることはありません。加害者の二人も淡々犯行を繰り広げていきます。それが返って不気味で、見る人を視覚からではなく、精神的に追い詰めていくような犯行の記録となっています。

 

97年版と同じストーリー、コピーのようなリメイク

 そして、本作はそんな作品のハリウッド版リメイクですが、監督・脚本は97年版と全く同じミヒャエル・ハケ。さらに、映画のストーリーや内容もほぼ97年版と変わりありません。正直言うとどちらを観てもいい感じです。

 違いはというと、キャストが豪華になったくらいでしょうか?ハリウッド版で被害者の夫婦を演じるのは「マルホランド・ドライブ」のナオミ・ワッツと「海の上のピアニスト」のティム・ロス

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 豪華キャストは嬉しいのですが、個人的には知らない俳優さんが演じていた方が現実味があって、暴力の記録映像のように撮影されたこの映画の本質がより味わえる気がします。有名な俳優さんが出ていると「フィクションだよね?」と自分に言い聞かせて安心してしまいますね。あと家に押し入ってくる男もハリウッド版はちょっとイケメンすぎる。

こちらが97年版。

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そしてこっちが本作。

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 それと、97年版のDVDには日本語吹き替えがないですが、本作のDVDには日本語吹き替え音声がついています。

 

 

悪ふざけのようで、実は作り込まれた知的な映画

 被害者家族は助けも呼べないまま、絶体絶命の状態なのですが、それに追い討ちをかけるのが、2人組の犯人がまるで「神」とも言うべき絶対的支配者であるかのような演出が散りばめられていることです。彼らは、画面の向こうの私たちに語りかけてきたり(いわゆる「第4の壁」を破る行為)、

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都合の悪いことがあると、テレビのリモコンで巻き戻したりします。見てない人は意味がわからないかもしれませんが、本当に巻き戻すんです。

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 被害者家族は、彼らが普通の人間だと思っていますが、映画を見ている私たちは、「やばい、こいつらは止められそうにない。」と絶望感を感じるとともに、家族の破滅的な運命を予感しながら映画を見せられることになります。これらは悪ふざけな演出のようですが、実は綿密に作り込まれた演出です。

 例えば、第4の壁を破る演出のために、BGMが排除されています。映画のBGMというのは本来、見ている人には聞こえているが登場人物には聞こえていないものです。しかし本作の劇中に流れる音楽は、CDから流れる音など、登場人物たちも聞いている音楽のみ。また、部屋の隅から犯行を傍観しているような引いたカメラアングルが多用されています。どちらも、見ている人にその場で犯行を見ているような感覚で映画を見せるための演出であると言えます。

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 リモコンでの巻き戻しや、一度家を出て行った犯人が奥さんを縛り上げて帰ってくるシーンなども、一度観客を油断させておいて、また地獄絵図に連れ戻す心理操作が非常に綿密になされていると言えます。

 

 

この残虐な映画に込められたメッセージ

 ミヒャエル・ハケネ監督は、この映画を「ハリウッド製スリラー映画のパロディ」だと言っています。この映画は見ている人の心理をかき乱す映画ではありますが、そこまで凄惨な暴力シーンは含まれていません。脅して服を脱がせたり、ゴルフのアイアンで足を殴ったりする程度。映画の世界では、その辺のハリウッド製アクション映画の主人公の方が、よっぽどひどい暴力行為をしています

 きっと監督は、ありふれた暴力行為を淡々と描き、観客にはまるでその場で見ているかのような感覚を与えることで、「君たちが映画の中で楽しんでいる暴力は、実はこんなにひどいことなんだよ?」と、言っているのかもしれません。

とにかく、暴力を見つめた映画であることは間違いない。

 

「ガメラ3邪神(イリス)覚醒」〜怪獣界のダークナイト!重厚なストーリーと迫力の映像を兼ね備えた日本怪獣映画の最高峰!

 「ガメラ3」は平成ガメラシリーズの最終章であり、「ゴジラ」シリーズを差し置いて、日本特撮怪獣映画史上最もドラマチックなストーリーと最も迫力のある映像を兼ね備えた、まさに最強の怪獣映画です。公開は1999年。当時小学生だった私は冬休みに映画館に観に行って大興奮すると同時に、大人も震わせるような奥の深いストーリーに打ちのめされた記憶があります。

 

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評価:5.0(人生の1本!)

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ガメラ3 邪神(イリス)覚醒

公開:1999年(日本)

監督:金子修介(本編)、樋口真嗣(特撮)

キャスト:前田愛中山忍、他

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※ 以下、重大なネタバレを含みます!

 

特撮とCGの融合による全く新しい怪獣映画

 この平成ガメラシリーズは特撮とCGが見事に融合した今までにない特撮シーンが見られます。CGと特撮が適材適所に使われることで、ガメラとイリスの迫力ある特撮シーンが描かれています。映画で本格的なCGが使われだしたのは、1991年の「ターミネーター2」の液体金属や、1993年の「ジュラシックパーク」の恐竜でしょう。公開当時の1999年は日本のテレビなどでもCGがよく見られ始めた頃でないかと思います。

 CGを使うことで、今まではおもちゃが飛んでいるようだったガメラの空中戦が迫力の映像に生まれ変わりましたゴジラとの差別化で生まれたのであろうこの「空が飛べる」という設定ですが、今作では本当の意味でガメラの持ち味の1つになったのではないかと思います。

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 また、朱雀がモチーフになっている生体のイリスの神々しく、また触手がひしめく禍々しいフォルムを映像化することにもこのCGが役立っています

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 一方、特撮にはCGには出せない独特の魅力があります。怪獣同士の戦いの重厚な感じや破片がひしめくビル破壊のシーンの迫力は特撮でしか出すことができません。

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 「ガメラ3」は特撮のみで撮られた今までのどの怪獣映画よりも、また、CGのみで撮られた最新怪獣映画の「シン・ゴジラ」よりも、迫力のある素晴らしい映像に仕上がっていると言えるでしょう。

 

 ちなみに、ガメラの造形についても、昭和のガメラはこんなのでしたが、

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本作のガメラは後述する重厚なストーリーに恥じない造形に進化しています。

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特撮怪獣映画史上最も重厚なストーリー

 そして、この「ガメラ3」が他の怪獣映画とは一線を画する重厚なストーリーを持つことも、この映画が最強の特撮怪獣映画たる理由の1つです。

 「ガメラ2」からの直接の続編であるこの映画。世界はギャオスの大繁殖により未曾有の危機を迎えていました。そんなこの映画の主人公の少女は1995年の「ガメラ大怪獣空中決戦」でガメラとギャオスの戦いに巻き込まれて両親を亡くした女の子

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 それからというものずっと両親を殺したガメラを憎み続けていました。そんな彼女がイリスという怪獣と融合し、ガメラを殺そうとするお話です。

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 憎むことと許すこと。ガメラは自分を憎む少女とどう戦うのか?そして、人類はこの未曾有の危機から逃れることができるのか?日本の怪獣映画で最も濃厚な人間ドラマと、怪獣たちの死闘が描かれます

 

怪獣界のダークナイト

 本作では常にボロボロになって地球や子どものために戦うガメラの姿が、とりわけ強調されて描かれています。ガメラといえば、「子供のピンチに駆けつけてくれる怪獣」です。しかし、本作は主人公の少女がガメラを殺そうとするお話。

 イリスを倒すために京都に現れたガメラ。少女の強い憎しみが生み出した怪獣は十分にガメラを苦しめ、その戦いは腹部に風穴が空き、片腕を失うほどの凄まじいものでした。

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 しかし、その戦いのあと、ガメラの手の中にはイリスと融合していた少女が握られていたのです。

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 自分を憎み、殺そうとする少女の命まで命まで救ったガメラ。この映画のラストシーンはそんな彼が、日本に飛来しようとしているスーパーギャオスの群れと戦うため、炎に包まれながら、満身創痍の体で歩みを進めるシーンで幕を閉じます。

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 ボロボロのガメラに勝機はないのかもしれません。それはすなはち、人類に未来はない、ということを表しています。でも、きっとガメラは戦うんだと思います。

 

人類に理解されることなく、

時には憎まれながら、

戦い続ける彼は、

沈黙の守護者、

、、、ダークナイト

 

 

 

 

ゴジラしか知らない人に贈る、日本特撮映画の最高峰!シリーズ1作目に見る「平成ガメラシリーズ」5つの特徴。

 特撮怪獣映画というと真っ先に「ゴジラ」を思い浮かべると思いますが、平成ゴジラシリーズの直後に展開された、日本特撮映画の最高峰というべき素晴らしい怪獣映画シリーズがあったことをご存知でしょうか?

 

 

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ガメラ 大怪獣空中決戦

公開:1995年(日本)

監督:金子修介(本編)、樋口真嗣(特撮)

キャスト:伊原剛志中山忍、他

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東宝ゴジラ大映ガメラ

 まず、ガメラの特徴を、同じく日本を代表する怪獣でありガメラと人気を二分するゴジラと比較しながら整理してみます。

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 ゴジラといえば、核と戦争から生まれた怪獣であり、日本人が抱える恐怖が具現化した恐ろしい存在です。1954年に東宝製作の「ゴジラ」でスクリーンデビューして以来、一時期はヒーローもののように数々の怪獣と戦わされてきたものの、常に人類の脅威として描かれてきました。

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 一方でガメラは1965年に大映が製作した怪獣映画「大怪獣ガメラ」の主人公。ゴジラと同じく人類の脅威として描かれているものの、子どものピンチに現れて敵対する大怪獣を倒す、という作品コンセプトが貫かれていることがゴジラシリーズとの大きな違いです。

 

平成ガメラ3部作とは?

 平成ガメラ3部作とは1995年に公開された「ガメラ大怪獣空中決戦」から「ガメラ3邪神〈イリス〉覚醒」までの金子修介監督の3本のガメラ映画を指します。

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それまで日本の特撮映画といえば、毎年お正月に公開されていた平成ゴジラシリーズでしたが、1994年のシリーズ集大成的作品である「ゴジラVSデストロイア」でゴジラが死んだことでシリーズは一時中断。それに変わって始動したのがこの平成ガメラシリーズです。

 

平成ガメラの特徴① 子どもを守るヒーロー

 子どものピンチに駆けつけ、怪獣の脅威から守るというコンセプト大映シリーズから受け継がれました。さらに、本シリーズでは人類を救うためにボロボロになりながら戦うガメラと、それを理解せず駆逐しようとする役人たち、そんな中ガメラの役割に気づいた主人公たち、の3つの関係がドラマチックに描かれます。

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上の画像は、ギャオスの光線から逃げる主人公たちをかばうガメラの手。

 

平成ガメラの特徴② ガメラの突飛な設定の刷新

 平成ガメラシリーズではガメラ新しい設定が与えられます。それはガメラは今は滅びた1万2000年前の文明が作り出した怪獣(生物兵器)であるということ。

 大映シリーズでは、確かモスクワの海に沈んでいた大怪獣が復活したという設定でしたが、ガメラには生物としては腑に落ちない点がいくつかあり、それが心無いファンからの笑いのネタになっていました。例えばガメラが足を甲羅に引っ込めると、そこからジェット噴射が出て、空を飛ぶというもの、、、笑。下の画像は昭和シリーズのものですが、当時、ゴジラとの差別化を図るため、なかなか思い切ったアイデアが満載の怪獣は今となっては滑稽ですらあります。

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 それもガメラが文明の作り出した兵器だとすれば納得がいきます。また、人間の子供を助けに現れる理由の説明にもなりました。ガメラはそもそも人類を守るために作られたわけです。

 

平成ガメラの特徴③ 繊細で大迫力の特撮シーン

 本シリーズが「日本特撮映画の最高峰」と呼ばれる所以は、その細かく手の込んだジオラマ大迫力の爆破シーンです。 

 作り込まれたジオラマは、まるで本当の街並みのようです。下の画像以外にも、東京タワーや公衆電話など本物と見紛うほど。マンションには窓が開いていたり、布団が干されていたり、生活感すら感じる素晴らしい造形でした。

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 そして、戦闘シーンは毎回下のような豪快っぷり。ガメラが暴れ出すとたちまち日本の名所は火の海となります

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 最終作になると、特撮とCGが融合された、今まで誰も見たことがなかったような怪獣映画に息を飲むことになるのですが、それはまた次回語ることにします。

 

平成ガメラの特徴④ リアリティのあるシナリオ

 怪獣映画ながらリアリティのあるシナリオを持ち合わせていることは公開当時話題となり、ヒーロー怪獣映画であるガメラシリーズは大人のファンをも多く獲得しました。バットマンを題材にした「ダークナイト」や、ゴジラのリブート作品である「シン・ゴジラ」のように「ガメラが現代に現れたらどんなことが起こるか?」という作品コンセプト。そのため、ガメラへの自衛隊の攻撃に内閣総理大臣の認可が必要だったり、犠牲者となる人々の描写も火の海に飲み込まれて行ったり、血しぶきが出たりと若干大人向けのリアルな表現になっています。

 

平成ガメラの特徴⑤ 決着は必殺技で!

 ガメラはこのシリーズで、ギャオス

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ギオン

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イリス

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という強敵と戦いますが、そのどれもがある必殺技で決着をつけます。そのどれもが見る人の意表をついた、しかし、説得力のある強烈な一撃です。この辺りは、ガメラという怪獣が実は人類の救世主、ヒーローとして描かれているが所以でしょう。

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映画館の座席はどこに座ればいいか?〜答えは人それぞれ。ただし、あなたにぴったりの座席がある。

 映画館に行ったらあなたはどの席に座りますか?最前列?一番後ろ?ど真ん中?毎週映画館に行っているような映画好きには最寄りの映画館に自分なりの特等席があると思いますが、年に数回映画館に行くような人にとって、「どこに座るか」は案外悩みどころかもしれません。本記事では、「どこに座ればどんないいことがあるか?」を解説してみたいと思います。

 

 

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首が痛くなる最前列

 最前列、、、というのはおそらく映画館において最も人気のない席だと思います。最前列で映画を見ると、首が疲れます。というか、おそらくどんなに小さい映画館でも前の3列目くらいまでは大きく見上げるように映画を見る必要があるのではないでしょうか。私の最寄りの映画館でも、人気の映画の人が多い時間帯は「シアター前方以外の座席は売り切れです。」という表示をよく見ます。

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 確かに、最前列は誰よりも大きな画面で映画を見れますが、おそらく首の疲労で映画を楽しめないことは間違いありません

 

後ろを気にせず見られる最後列

 「映画館では最後列に座るのがいい」という人も少なからずいます。個人的には最後列のメリットは後ろを気にしなくて済むことです。私は中学校の教師をしていますので、映画館で教え子に出会うと気恥ずかしいの半分、指導しないといけないの半分(私が勤務する学校では生徒だけで映画館に入ってはいけないのです。)で、もう映画どころではありません。後ろに生徒が座っていることに気づいた時なんかは、もう後ろが気になって仕方がない。もちろん先生をしていなくても、大人気なくこっそり子供向け映画を見に行く時や、柄にもなく恋愛映画を見に行く時や、映画館で大号泣する人に最後列はオススメです。座席を蹴られる心配もありません

 ただし、最後列にはデメリットもあります。それは、スクリーンが小さく感じるかもしれないということです。映画館の広さやスクリーンの大きさにもよりますが、最後列に座ると、映画館の大きいスクリーンも小さく、遠く感じます。これは劇場に行ってみないとわかりませんが。最後列をとってみて、「なんだかスクリーンが遠いな。」と後悔しないようにしましょう。

 

一番人気のど真ん中

 映画館の一番人気の席はど真ん中の席です。音響的にも映画館のサラウンドシステムが十分に堪能でき、スクリーンも遠からず近すぎない座席になります。発券時の空席具合を見ると、どの映画館のどのスクリーンもだいたいど真ん中周辺の席から売れていきます。

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 デメリットについては、特にありません。最も無難な座席と言えるでしょう。強いてデメリットを挙げるとすると、上映中にトイレに行きにくいことくらいですが、そもそも上映中にトイレに行ったりしませんよね?僕は毎週映画館に行っていますが、過去に上映中に離席をしたことは一度もありません。トイレは事前に行っておきましょう。

 

左右はなるべくど真ん中に近い席を

 映画館の座席について、前後の関係については、好みが分かれるところですが、左右の関係はど真ん中に座るのが鉄則といって間違いありません。ど真ん中が売り切れていたとしても、なるべく真ん中に近い席に座りましょう。ただし、少々真ん中から左右にずれた席しか残っておらず、斜めからスクリーンを見ることになってしまっても、予告編が終わってシアター内が真っ暗になってしまうと、さほど気にならないものです。

 

個人的ベストポジションは?

 私の個人的なベストポジションはシアターのど真ん中から少し前方の席です。少し前方が好きな理由は、せっかくの大画面なので、少し近くで、少し見上げるくらいの見方で見たいから、というところがあります。

 下の座席表で言うと、L17、L18辺りでしょうか?

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4DXシアターでは?

 4DXシアターというのは、眼鏡をかけて見る3D映画に加えて、映画に合わせて座席が動く、風が吹く、水が出る、スモークが出る、フラッシュがでる、、、など数々の特殊効果を楽しむ映画のスタイルです。そのため、4DXシアターでの座席選びは「いかに特殊効果を楽しめる座席を選ぶか?」というのが大きなポイントとなってきます。

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 劇場にもよると思いますが、私の最寄りの4DXシアターでは最前列で見ても首が痛くなるほどスクリーンを見上げることはありません。スモークなどの効果があるため、スクリーンから最前列までにかなりの距離があるためです。

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 また、4DXではなるべく前に座った方がスモークとシャボン、雪の3つの効果を堪能できます。この3つの効果はシアター前方から発せられる効果なので、あまり後ろの方に座ると堪能できません。シアター後方では、スモークが風に乗ってやってきても、すでに映画は次のシーンに、、、ということもしばしばあります。スモークにたっぷりと包まれながら映画を観れるのはおそらく前方3列目くらいまでだと思います。ちなみに最前列はスモークが風でさっさと吹き飛ばされてしまいます。2列目くらいがいいかな。

 そして、椅子の動きについてですが、4席横1列になった椅子のうち、両端の座席の方が少しだけ動きが激しいです。これはなぜかというと、4つの座席の真ん中に支点があり、そこを中心にシーソーのように座席が動くからです。

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 つまり、4DXシアターのベストポジションはおそらく、前から2列目の真ん中通路側の座席。下の座席表で言うと、E8、E9、E12、E13辺りです。

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いかがでしたか?

シアターの規模や座席配置によって、例外もありますので、参考までにご活用ください。

「否定と肯定」〜勧善懲悪とチームワークの法廷劇

新作レンタルの話題作、「否定と肯定」を鑑賞しました。

 

 

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評価:3.5(普通の映画)

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否定と肯定(原題:Denial)

監督:ミック・ジャクソン

公開:2016年(アメリカ)

キャスト:レイチェル・ワイズトム・ウィルキンソン、 他

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ミック・ジャクソンらしい勧善懲悪の法廷劇

 ミックジャクソンという映画監督を知ってますか?彼の名前は知らなくても、1992年に彼が監督したラブストーリーを知らない人はいないでしょう。

ボディガード(1992年・アメリカ)

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 「ボディガード」はラブストーリーとして有名ですが、実際に見てみると、決してしみったれた恋愛映画ではなくて、アクションあり、犯人探しあり、さらにはホイットニー・ヒューストンケヴィン・コスナーという豪華キャストの共演もあり、そして主題歌も名曲という、最高のエンターテインメントムービーとなっています。

 そして、本作品はホロコーストの真意をめぐる法廷劇」というお堅い題材を扱っていますが、物語の主題は単純明快。チームワーク人種差別です。史実についても、「かつてホロコーストという大量虐殺があった」ということさえ知っていれば、物語が十分に理解できる良心的なストーリーで、正義の主人公たちが悪のホロコースト否認論者を打ち負かす勧善懲悪の法廷劇です。

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 一歩間違えればとっつきにくい映画になってしまいがちなこの題材を見事にエンターテインメント映画に仕上げたのは監督ミックジャクソンのなせる技なのかもしれません。

 

ホロコースト否認論者VSペンギン出版

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 この映画は「アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件」という事実に基づくストーリーです。そして、物語にはホロコースト否認論者といわれる人が出てきます。「え!?そんな本当に人いるの?」と驚きましたが、さらに、この裁判の発端となった訴訟が1996年になされたものであると知って驚愕しました。ホロコーストが確かに行われたものであることは自明の事実。この物語は、ホロコーストの真偽をめぐる裁判というよりも、人種差別主義者との戦いを描いたものであるといえます。ちなみに、いくつかの国ではホロコースト否認論を唱えることは、ヘイトスピーチとして取り締まられることにもありますのでご注意ください。

 

法廷劇という魅力

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 「法廷劇」とはその映画の舞台を主に法廷にし、裁判の行く末を通してヒューマンやサスペンスのドラマが展開されていく作品を言います。法的劇の名作といえば「情婦」、「12人の怒れる男」、「告発」、などでしょうか?

 法廷劇は一見地味なようですが、いくつかの素晴らしい魅力を持っていますので、ぜひご覧ください。次回は法廷劇の魅力について書こうと思っています。

 

「万引き家族」〜是枝監督の集大成はまさに現代の日本映画!うまい!切ない!面白い!

 話題作なのに無視してきた是枝監督最新作をやっと観てきました。もうすぐ公開終了なのでギリギリセーフです!感想は素直に面白かった!キャラクターも、ストーリーもまっすぐ直球ストレートで面白いし、きちんとメッセージがあって、撮り方や台詞回しがうまくって。邦画の中には「テレビでしろよ!」っていう作品も大きなかで、こういうのを「いい映画」っていうんだろうなぁ、と思いました。

 

 

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評価:4.0(面白い映画)

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万引き家族

公開:2018年(日本)

監督:是枝裕和

キャスト:リリー・フランキー安藤サクラ樹木希林松岡茉優、他

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※ レビューにネタバレを含みます!

 

是枝監督が描き続けたテーマの集大成

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 是枝監督は「家族」についての作品を描き続けています。「誰も知らない」や「海街diary」、「そして父になる」はテーマそのものが家族である作品だし、「3度目の殺人」でも、「家族」というテーマが物語のポイントになっています。そして、そのどれもが、何かが普通ではない家族のあり方から、家族とは何かを考えさせるストーリーになっています。

 そう考えると、今回の「万引き家族」はその集大成とも言うべき作品。間違いだらけの家族の中に垣間見える理想の家族のような風景に、私たちは何を感じればいいのでしょうか?

 

日常を描いているようで、おとぎ話のようなお話

 映画を見ていて、終始不思議な感覚を味わっていました。なぜなら、この映画は現代の日本をシビアに描いているようで、その主人公たち家族があまりに現実離れしすぎているからです。この点が受け入れられなかったという人も少なからずいるようですが、、、。

 貧困、殺人、窃盗、風俗、詐欺、誘拐、虐待などなど、現代社会のあらゆる問題がひしめき合う、現代の日本の縮図のような「万引き家族」。あまりに現実離れしたこの家族は現代社会の異物のようであり、また、都会の片隅に突如現れた傷ついた心のオアシスのようでもあります。

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 そんな幻想のような家族に温かさや疑問を感じながら映画を見ている私たちは、最後の最後にその家族の崩壊を見届けることになります。間違いだらけの家族が消え去った後、残ったのは私たちの周りにもある普通の日常でした。あるべき人があるべきところへ帰ったその光景は、間違いが正された然るべき世界である反面、オアシスが消え去った砂漠のようでもありました。このおかしな家族とシビアで現実的なテーマの対比が絶妙だと思います。

 

パルムドールにふさわしい「うまさ」があった

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 ストーリーもわかりやすく、キャラクターも魅力的で、メッセージもはっきりしている。大変観やすくわかりやすいこの映画ですが、当然、パルムドール受賞の理由はその内容の面白さだけではありません。この映画には3つの「うまさ」がありました。

無駄のない緻密な脚本の「うまさ」

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「なんて無駄のない高密度な映画だろう!」現代の日本の日常を描いているようなこの映画、しかし、一見くだらないコメディのようなシーンでも、出来事の1つ1つが物語をクライマックスに導くために必要不可欠な要素となっています。それだけでなく、セリフの1つ1つに登場人物の人となりを表す言い回しあり、無駄な台詞すら1つ足りともないのではないかと思うほどの緻密な脚本。また、ワンカットワンカットが原案と脚本も手がけた是枝監督のキャラクターへの愛情であふれていて、大変絵になる。素晴らしい映画でした。

 

実力派俳優陣の「うまさ」

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 観ているだけで安心できる名前のある役者陣で構成されたこの家族。この映画にはセリフがなく、表情や間の取り方で語るような演技が大変多いように感じました。そして監督もまた、彼らの中からこのキャラクターたちを引き出すために、あの手この手で役者陣とぶつかったようです。役者の演技力監督の手腕が炸裂した、やはり素晴らしい映画でした。

 

余白の「うまさ」

 この映画はわかりやすい内容のストーリーでありながら、非常に考えさせられる作品です。その理由は物語に散りばめられた「余白」にあります。治はなぜ拾ってきた子に自分の本名をつけたのか?亜紀はなぜ妹の名前を風俗の源氏名にしたのか?2人の子どもは本当の家族の元で幸せになれたのか?おばあちゃんと亜紀のつながりはお金だったのか?そして、万引き家族」は一体何でつながっていたのか?

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 この、あえて語られない「余白」が物語の深みであり、私たちが考えても考えても答えを出せない、現代社会の疑問符なのです。

 

 

どこを取っても隙のない、

素晴らしい日本映画に、拍手!

「千と千尋の神隠し」〜一夏の和製アリス。なぜ千尋は現実世界に帰れたのか?あの都市伝説の真相は?

 「未来のミライ」で味わえなかった一夏の冒険を追い求めて「千と千尋の神隠し」を鑑賞しました。この映画は少女の一夏の成長と冒険を描いた物語。2年前の「君の名は。」の快進撃を食らっても揺るがない日本歴代興行収入No.1作品であり、アカデミー賞長編アニメ部門を受賞した日本が誇るアニメ映画です。

 

 

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千と千尋の神隠し

公開:2001年(日本)

監督:宮崎駿

キャスト:柊瑠美入野自由夏木マリ内藤剛志沢口靖子菅原文太、他

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和製「不思議の国のアリス

 このお話は少女が突然不思議な世界に迷い込むお話。その不思議の舞台は銭湯。そこで主人公の千尋は様々な魑魅魍魎たちとコミカルでちょっと恐ろしい体験をしていきます。その様はまさに和製「不思議の国のアリス

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 「腐れ神」や「カオナシ」、「湯婆婆」など、深読みすればするほど何かのメッセージが込められていそうな個性豊かなキャラクターたちを、世界一のアニメ制作スタジオであるスタジオジブリが躍動感に溢れためくるめくアニメ表現で動かすことで、唯一無二の世界が作り出されています。 

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 また、「不思議の国のアリス」のような荒唐無稽な文学作品のことを「ナンセンス」と呼びますが、この映画もナンセンスと同じような文学的魅力を持っていて、観る人ごとにいろいろな解釈ができるのもこの作品の大きな魅力の1つです。

 

油屋=風俗店という都市伝説は本当か?

 作中にいろんな仕掛けや細かなこだわりを盛り込む宮崎駿だからこそ、この作品にも色々な噂や解釈があります。その中でも有名なのが、

油屋は風俗店で、千尋は汚いお客の接待をさせられていた。

というもの。

 これについては、ある意味本当でしょうね。

 宮崎駿自身が「油屋で千尋は湯女として働くことになる」とはっきり言っています。湯女(ゆな)っていうのは、江戸時代のお風呂屋さんでアカスリなんかをしてくれる女性だったのですが、そのうち売春をするようになったという歴史があります。それも、遊郭とは違ってお客を選ばない、現代の風俗店に近い営業スタイルです。なので、乱暴に結びつければ、「千尋は風俗嬢として働かされていたんだ!」ということにできそうです。

 しかし!みなさん!劇中で千尋ちゃんはエッチなサービスしてませんよね?汚いお客さんの体を綺麗にしてあげたり、わがまま言うお客さんに追いかけ回されたりしましたが、性的なサービスはしていません。この作品で、「主人公がいやーな仕事を強いられる」ことは物語の最重要ポイントですが、それが風俗である必要はなく、彼女の仕事については劇中で描かれることが全てです。

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 確かに、湯女には「お客を選ばない売春」のイメージがあり、宮崎駿はそこを上手に利用して、苦労を強いられる千尋を描きました。また、主人公の女の子の成長物語について、接客をするうちにコミュニケーション能力が向上する若い水商売の女の子から油屋という着想を得たそうですが、それはあくまで製作段階でのお話。

 それにしても、「油屋って風俗店を表してるんだって♪」「なるほどー♪」と楽しそうに話している人を見ると「やれやれ。」と思ってしまう今日この頃です。

 

千尋が自分の名前を間違えた2つの理由

 千尋は湯婆婆に名前を書けと言われた時、自分の名前を間違えています。「萩」の「火」が「犬」になっています。これは、わざと間違えたわけではなく、たった10歳の千尋が本当にうっかりと、または覚え間違えていて間違えたものだと思います。この間違いはまだ名前もきちんと書けない少女がこれから試練に巻き込まれていくということを強調すると同時に、実は千尋は湯婆婆と契約していなかったということを表しています。

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 ハクが「本当の名前を教えてしまうと帰れなくなる」と言っていることから、油屋の契約は湯婆婆に名前を教えてしまうことで成立すると思われます。しかし、千尋は本当の名前を書いていないのに油屋で働くことになっていまいました。千尋は本当は働く理由なんてないのに言われるがままに働いていたわけです。これが、最後の豚の中に両親がいないことを見破るシーンに繋がっていきます。

 

油屋とはなんだったのか?

 宮崎駿はインタビューの中で、「油屋は日本そのもの」と語っています。ここからは僕の勝手な解釈ですが、油屋で働く人たちが、誰かの都合で当たり前のように働かされている様子が「日本そのもの」なのではないかと思いました。この物語は言われるがままの千尋が、自分の目で真実を見るようになるまでの成長物語なんです。

 

豚の中に両親がいないことを見抜けた理由

 以上のことを踏まえて、千尋の最後の試練を考えてみたいと思います。彼女はどうしてあの豚の中に両親がいないことを見抜けたのでしょうか?

 それは、千尋が様々な人に出会い、いろいろな体験をしながら精神的に成長し、「本当のもの」を見ることができるようになったからだと思います。

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 働く必要もないのに言われるがままに働いていた千尋が、最後には油屋の洗脳から解き放たれて、真実を見いだすことができたという所に彼女の精神的成長が描かれているのがこの映画です。油屋に迷い込んだ頃の彼女だったら、湯婆婆の言われるがままに、あの豚の中に両親がいると思いこんで当てずっぽうを言っていたかもしれませんね。

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