シネマライフ・キングダム

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「最強のふたり」〜暖かな雰囲気に包まれた、バリアフリーな映画です。

今日はフランス産ヒューマンドラマのレビューです。

 

 

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評価:4.0(面白い映画)

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最強のふたり

2011年(フランス)

監督:エリック・トレガノ、オリヴィエ・ナカシュ

キャスト:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、他

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実話を基にした心温まる物語

 この映画のストーリーは、いわゆる「実話を基にしたストーリー」。脊椎を損傷し、首から下が麻痺してしまった電動車椅子の富豪のヘルパーに採用されたのは、看護師でも、介護のスペシャリストでもなく、軽い気持ちで面接に現れたスラム出身の黒人青年でした。「障がい者のかたが元気に過ごせるように」などと綺麗事を並べるヘルパーに飽き飽きしていた富豪のフィリップはどういうつもりか、周囲の反対にも関わらず、障がいにも介護にも無頓着なスラム出身の黒人であるドリスをヘルパーとして採用します。この2人の絆の深まりと友情を描いた物語です。

 

凸凹コンビのバディムービー

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 この映画は監督、キャスト共にマイナーな顔ぶれですが、世界中で高評価を受けています。その理由の1つに、この映画が「凸凹コンビのバディムービー」という、お話が必ず面白くなる映画の要素を備えていることが挙げられます。つまり、コメディとして普通に面白いんです。「リーサルウェポン」も「ラッシュアワー」も「ミッドナイトラン」も、凸凹コンビのやりとりが面白いバディムービーです。ドリスはヘルパーなので車椅子のフィリップとともに社交界の色々な場所へ同行するのですが、美術館で見た現代アートを「鼻血が垂れたみたいだ」と言ったり、オペラの衣装を見て爆笑したり、フィリップも見ている私たちもついつい笑ってしまいます

 

バリアフリーな映画としてお楽しみください

 この物語はとにかくバリアフリーな映画。肢体不自由という障がいをテーマとして扱った作品でありながら、物語は2人の主人公の交流を中心に描かれていきます。

 介護や看護の経験など皆無のドリスはかなり型破りなヘルパーでした。フィリップをバカにもするし、口答えもします。でも、フィリップにとっては、自分を障がい者扱いしないドリスの対応が心地よかったのでしょう。ドリスも決して思いやりのない人間ではなく、フィリップのことを障がい者としてではなく1人の友人として大切にします

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 この2人の不思議な友情を象徴するシーンがあります。美術館でスナック菓子を食べているドリスに、フィリップが「私にもよこせ。」というと、「これは健常者用だからだめだ。」と笑いながら断るドリス。なんて不謹慎な、、、。と思ってしまいそうな場面ですが、このきつい冗談の後、フィリップもドリスもゲラゲラと笑うのでした。

 僕が思うにフィリップって結構やんちゃな人だったんじゃないかと思います。車も介護用以外にいかついの持ってたし、パラグライダーとかアクティブなレジャーもしてたみたいだし。そんな彼に自分らしい自分の生活、つまり「普通の生活」をさせることができたのは、彼を障がい者としてしか見られない介護のプロではなく、そういうことにはに無頓着なドリスだったのです。

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 実はこの映画の中で、障がいについては意外と描かれていません。障がいなど全く気にも留めないドリスと、そんな彼と一緒にやんちゃをしている車椅子のフィリップを見ているうちに、観ている私たちもこの映画が障がいを扱った映画だということを忘れてしまうような、そんな気分にさせられてしまいます。