シネマライフ・キングダム

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「ジュラシックワールド/炎の王国」〜大作の続編らしからぬ大きなストーリー展開のシリーズ集大成

大ヒット上映中の「ジュラシックワールド/炎の王国」を4DXで見てきました。

※重大なネタバレを含みます!

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評価:3.5(普通の映画)

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ジュラシックワールド/炎の王国(原題:Jurassic World:Fallen Kingdom)

公開:2018年(アメリカ)

監督:ファン・アントニオ・バヨナ

製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ

主要キャスト:クリス・プラット 他

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大きなストーリー展開を含む大胆な続編

 本作は1993年に製作された「ジュラシックパーク」の続編シリーズ。シリーズとしては5作目ですが、前作の「ジュラシックワールド」とは、登場人物や舞台設定を同じくした直接の続編となっています。

 「ジュラシックパーク」シリーズといえば、1作目の大ヒットにあやかり、「ロストワールド」、「ジュラシックパーク3」という、なんともパッとしない続編が作られたことが語り草です。

 しかし、本作については、ラストに衝撃的な展開が用意された、思い切ったストーリーの作品となっています。過去の大作に物怖じせず、また、いくらでも続編を作ってお金儲けができそうなこのシリーズに、こういった大胆な展開を持ってきたことに頭が下がりました。

 

 シリーズ中一貫して語られてきた哲学の集大成

 「ジュラシックパーク」シリーズには、シリーズ中一貫した大きなテーマがあります。それは、「生命倫理の警鐘」と「自然への畏怖」です。

 

生命倫理の警鐘

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 そもそも、ジュラシックパークとは人間が現代に恐竜を蘇らすのですが、なんらかのトラブルが発生し、パニックに陥るというストーリー。今回も人たちが兵器として作った恐竜、「インドラプトル」が暴走し大変なことが起きてしまいます。さらに、今回はクローン人間の少女が物語のキーマンとして登場することで、さらにこのテーマが深く語られることになります。

 

自然への畏怖自然との共存

 このテーマについては今までの作品とは少し違っています。今までの作品では、クライマックスに主人公たちが恐竜に襲われそうになると、危機一髪のところでもっと強い恐竜が出てきて、あっさりとそいつをやっつけ、「恐竜ってすげー。」と思わせる展開が用意されていました。主人公たちを助けるでもなく、かばうでもなく。主人公たちも、見ている私たちも恐竜たちのスケールの大きさに圧倒されるばかり、、、というシーンです。

 しかし、本作で最後に主人公たちを襲おうとするインドラプトルを倒したのは前作で主人公が愛情をかけて育てたブルーでした。もちろん、凶悪なインドラプトルよりも小さく弱い恐竜です。頭突きが得意なパキケファロサウルスを自在に操ってピンチを切り抜ける主人公や、ブルーを輸血で救うシーンからも恐竜と人間の共存が描かれています。

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しかし、あのラストシーンは?

 前項で述べたように、恐竜と人間の共存が描かれた本作ですが、あのラストシーンはどうでしょうか?本作のラストシーンは、クローンの女の子がクライマックスで恐竜を逃したことで、恐竜と人間が共存する世界がやってきます。

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「ようこそジュラシックワールドへ!」

っていうシーンです。一見、これから恐竜と人間が共存する世界がやってくるかのようなラストシーンですが、自分には「人類と恐竜の共存」という果てし無い希望を夢見るというよりも、人類が築いた王国が恐竜によって崩落してしまうことを想像させるような、おぞましいエンディングであるように感じました。皆さんはどうだったでしょうか?

 

「炎の王国」という邦題について

 邦題は炎の王国なので、劇場予告編で見たような火山大噴火するジュラシックワールドで恐竜たちが大暴れするもんだと思っていましたが、それはあくまで物語の前半部分。むしろ本編は後半の屋敷の中のインドラプトルをめぐる物語でした。

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 では、原題はというと、"Jurassic World: Fallen Kingdom"。"Fallen Kingdom"ということは直訳すると「落ちた王国」とか「死んだ王国」とか「陥落した王国」という意味です。あのラストシーンを見た後では、火山の噴火による「ジュラシックワールドの消滅」と恐竜たちの進出による「我々人類の王国の消滅」のダブルミーニングのように聞こえて仕方ありません。

 

「未来のミライ」〜細田守史上最も小さく最もありふれたファンタジー〜

中学校で働いている私は、本日からいよいよ夏休みです。夏休み気分を味わいたくて、昨日公開の夏休み映画を見に行きました。夏休みのアドベンチャーは用意されておらず、残念な結果となりました。しかし、今までの細田作品とは違った意味でスケールの大きなありふれたファンタジー映画を楽しむことができました。

 

 評価:3.5(普通の映画)

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未来のミライ

公開:2018年7月20日(日本)

監督:細田守

主要キャスト:上白石萌歌黒木華星野源麻生久美子福山雅治、など

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時をかける少女」、「サマーウォーズ」、「おおかみこどもの雨と雪」、「バケモノの子」など夏休みアニメ映画の代名詞の1つになった細田守

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 青空にぎゅっと手を握りあう主人公のポスターを見て、童心に帰って一夏の冒険をしようとワクワクしながら映画館に行きました。

 

しかし、今回の細田守作品は、今までのそれとは一味違っていたのでした。

 

ささやかだけど大きなスケールの物語

 本作の舞台はとある一軒家。主人公の男の子(くんちゃん)の精神的成長を描く物語なのですが、なんと舞台は全て彼のお家の中です。実は主人公がそこから出ることはありません。おそらく細田守の映画史上最も狭い舞台の作品と言えます。

 しかし、物語のテーマは受け継がれる命のつながりと家族の絆の物語。主人公のくんちゃんは自宅の中にある不思議な中庭で、自分とお姉ちゃんと、お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、ひいおじいちゃんの命のバトンのつながりを感じる体験をします。この不思議な体験が細田守らしいダイナミックで個性的でファンタジックな作画で描かれます。

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命の物語はきっと大人向け

 家族のつながりの物語は大変わかりやすく、大人から子供まで楽しめると思いますが、このテーマは実は少し大人向けの内容なのかな、と思いました。ひいおじいちゃんのプロポーズや、自転車の練習をするシーンで本当に涙を流せるのは、ある程度人生を経験した大人たちだと思います。

 ド派手な展開や、夏の大冒険は用意されておらず、ある家族の命のつながりを丁寧に描いて行きます。「夏休みの始まりに…。」と期待した、冒険はできませんでしたが、道徳の教材で扱う「命のバトン」のようなお話を見せていただき、自分の今までを振り返りながら、大切な人を大切にしようとか、自分自身を大切にしようとか、そういうことを考えることができました。

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全ての人に起こるであろうファンタジー

  触れ込みでは、主人公の男の子が女子高生に成長した未来の妹に出会うファンタジー映画でした。確かに、主人公が彼の家族の歴史に触れる表現は映像的にも脚本的にもファンタジックな面白みがありましたが、この映画で何よりファンタジックに描かれていたのは、家族のつながりと巡り合わせの奇跡でした。

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それは、

きっと僕らの人生にも起きている、

ファンタジー

 

「パーフェクトワールド」〜 脱獄犯と少年の涙腺崩壊ロードムービー

 記念すべき最初の記事は、1番好きな映画で始めようと思います。1番というと決めかねるものですが、僕の中ではとりあえずこの映画がマイベストムービーかと思います。

評価:5.0(人生の1本)

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パーフェクトワールド(原題: A Perfect World)

公開:1993年(アメリカ)

監督クリント・イーストウッド

主要キャスト:ケヴィン・コスナークリント・イーストウッド

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 ケヴィン・コスナー演じる脱獄犯のブッチが、逃走用の車を強奪するために押し入った家の男の子フィリップを人質にとるところから物語が始まります。地獄の逃走劇が始まるかと思いきや、ブッチとフィリップにはある共通点があり、不思議な絆で結ばれた2人のロードムービーが心揺さぶるクライマックスに向けて展開されていきます。シンプルでわかりやすいストーリーですが、何度見ても涙が溢れるクライマックスが用意された感動的な作品です。

 

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 監督はクリント・イーストウッド。最近は「アメリカンスナイパー」、「ハドソン川の奇跡」、「15時17分、パリ行き」など、「世界仰天ニュース」のようなノンフィクション映画を撮っていますが、90年代には本作の他にも「ミスティックリバー」「許されざる者」など名作映画を監督しています。本作にも渋いベテラン警官役で出演しています。

 

ロードムービー、旅路=人生。

 このお話はいわゆる「ロードムービー」。旅をする主人公たちに様々な出来事が待ち受けていて、それを追いかけながら物語が進行するタイプの映画です。本作もブッチとフィリップの旅路でいくつかのイベントが待ち受けているのですが、その1つ1つがブッチの人生を象徴する出来事で、全てが映画史に残る感動のクライマックスに繋がっており、シナリオに無駄がありません。この様式美が、涙必至のクライマックスに加えてこの映画のもうひとつの素晴らしさであると言えます。本記事では、ブッチの人生を物語る出来事を振り返りながら、2人の旅路を振り返ってみます。

 

⑴ テリー殺害

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 道中最初の出来事。ブッチが脱獄仲間であるテリーを殺害するシーンです。このシーンでブッチは、フィリップをいじめて殺しかねないテリーを殺害し、フィリップを守ります。「ブッチはただの悪人ではない。」と観る人に思わせるシーンであり、ブッチとフィリップの2人っきりの旅路の始まりです。

 

⑵ フォード強奪

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 ブッチが逃走用の車を変えるため憧れのフォードを強奪するシーンでは、フィリップがブッチの犯行をお手伝いします。このシーンで、2人はいわゆる共犯者となるわけです。2人の間に、「父親に恵まれなかった」という共通点が見つかるのもこの犯行の直後。少しずつ彼らの絆が深まっていきます。

 

⑶ 笑顔の店

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 洋服屋「笑顔の店」でのブッチと警察の緊迫したシーン。ブッチに「乗るのか?」と聞かれたフィリップが自分の意思でブッチの車に駆け込みます。フィリップがブッチのことを信用し、自分の意思でこのロードムービーに参加することを決断したシーンです。

 

⑷ 「お菓子ちょうだい」

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 母親がエホバの証人を信仰するせいでハロウィンができなかったフィリップのためにブッチが1日遅れのハロウィンをしてあげるシーン。売春宿で育ったせいで荒れた人生を送ることになったブッチが、家庭環境のせいで自由を制限されているフィリップに同情している様子がよくわかるシーンです。

 

⑸ 車に乗せてくれた家族

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 燃料切れでフォードを失ったブッチとフィリップは偶然にも、家族づれと出会い、車に乗せてもらうことになります。車を強奪するのではなく、家族と歌を歌って陽気に振舞っていたブッチ。ですが、コーラをこぼした子ども達に激怒する母親を見た瞬間、顔色が変わります。フィリップも浮かない表情。ブッチは父親に銃を見せ車を奪います。奪った車で、ブッチはフィリップが乗ったことがないというジェットコースターごっこをしてあげてたっぷりと楽しませてあげるのでした。家庭環境に恵まれない2人の心が通じたようなシーンでした。少なくともブッチは、そう感じていたはずです。

 

⑹ アイリーンの店

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 これはコミカルなようで2人の旅路を終点へと導く重要な分岐点になりました。飲食店の未亡人とエッチなことをしようとしていたブッチは、その様子をフィリップに見つかってしまい、気まずい様子で店を後にします。フィリップに「なんでキスするの?」と聞かれたブッチは、「お前のママも男の人とするだろ?」と何げなく聞き返しますが、「ママはしない。」とフィリップ。何とも言えない表情をするブッチでした。

 売春宿で娼婦の母親と育ったブッチは自分とフィリップの境遇を重ね合わせていましたが、フィリップには彼を愛してくれている母親がいて、帰る場所があるということをひしひしと感じるブッチ。

 

⑺ 農家での出来事

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 ブッチの心の闇が露わになるシーンです。脱獄犯でありながら、警察に追い詰められても全編を通して余裕をもって冷静に振舞っていたブッチ。しかし、この農場で息子に手を挙げる父親を見た瞬間。ブッチの目の色が変わります。父親を殴り、銃を向け、家族を縛り、鬼気迫る表情で「息子に愛していると言え!」と、強要するのでした。幼少時代、父親の暴力で人生を台無しにしたブッチの心の傷が露わになった瞬間。そして物語はクライマックスへ。

 

 上に述べたように、道中に様々なイベントを用意しながら、ブッチの人生を丁寧に丁寧に描いてきた上で、物語はクライマックスへ。ロードムービーでは、「旅路」と「人生」が重ね合わせられることがよくあります。本作においても、ブッチとフィリップが辿った旅路から、ブッチの人生そのものを物語っていました。

 

旅の終わりには必ず「別れ」が待っている

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「ブッチ、本当はいい人なんでしょ?」

「いいや、悪い人さ。」

 

映画史に残る名シーンはみなさん自身でお楽しみください。

このブログについて

自己紹介

初めまして。KIHOと申します。

DVD、劇場、合わせると年間のべ500本ほどの映画を鑑賞していることがわかり、

自分でも驚いています。

映画に取り憑かれた、平成元年生まれの英語教師です。

毎週金曜日に疲れた体でレイトショーを見に行くことを楽しみに、

毎日仕事に精を出しています。

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映画館に行ってはこんな顔で映画を見ています。

愛媛県の映画館でこんな奴を見かけたら私だと思ってください!

朝から晩まで入り浸ることも。

 

このブログについて

コラム

 映画についてあれこれ語っています。「映画館でどの座席に座るのがいいのか?」とか、監督やキャストについて語るとか、作品についてではなく、映画について思ったことをざっくばらんにするような、そういう内容の記事です。

 

レビュー

 おこがましいですが、映画に点数をつけて評価しています。満点が5.0で以下のように評価しておりますので、映画を選ぶ時やオススメの映画を見つける時の参考にしていただければと思います。

 5.0  お墓にも入れて欲しい人生の一本

 4.5  何度も観たい素晴らしい映画

 4.0  もう一度観ようと思う面白い映画

 3.5  また観るかもしれない普通の映画

 3.0  もう観ないかもしれない微妙な映画

 2.0  もう2度と観ないであろう面白くない映画 

 数字だけだとわかりにくいので、「また観たいか?」という観点で文章にして観ました。最低でも2.0をつけているのは作り手側への感謝の気持ちと、「全く面白くない映画なんてない!」という自分の映画への愛だと勝手に思っています。その点数をつけた理由を中心に記事を書いていますので、「そんな点数をつけるなんて、わかってないなぁ!」とか、「そんなに面白い映画じゃないだろ!」とか、または「そうそう僕も(私も)そう思った!」などなど、ご意見のある方、ぜひ気軽にコメントください!

 

考察

 1本の映画についてあれこれ考えたことを解説しています。「千と千尋をめぐる都市伝説の真相」とか、「ドニーダーゴのうさぎの正体とは?」とか、そんな記事を書いてみたいと思っています。

 

ネタバレについて

 ネタバレについては、「します!」。映画の感想を語る際の必要に応じて。ネタバレする場合は、必ず、

※レビューにネタバレを含みます!

と冒頭に大きく表示しておきますのでご安心ください。映画の予告編やポスター、前作の内容などからわかる範囲の情報については、基本的にネタバレの表示はしませんのでご了承ください。

 

遠慮なくコメントしてください

 評論家でもない私が好き勝手語っている記事に対して、「それ、違うんじゃない?」とか「間違ってるぞ!」と思った方は、ぜひぜひ、コメントいただければ幸いです。ブログコンセプトは「映画の話をしよう!」ですから!

 

 それでは皆様よろしくお願いいたします!