シネマライフ・キングダム

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「未来のミライ」〜細田守史上最も小さく最もありふれたファンタジー〜

中学校で働いている私は、本日からいよいよ夏休みです。夏休み気分を味わいたくて、昨日公開の夏休み映画を見に行きました。夏休みのアドベンチャーは用意されておらず、残念な結果となりました。しかし、今までの細田作品とは違った意味でスケールの大きなありふれたファンタジー映画を楽しむことができました。

 

 評価:3.5(普通の映画)

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未来のミライ

公開:2018年7月20日(日本)

監督:細田守

主要キャスト:上白石萌歌黒木華星野源麻生久美子福山雅治、など

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時をかける少女」、「サマーウォーズ」、「おおかみこどもの雨と雪」、「バケモノの子」など夏休みアニメ映画の代名詞の1つになった細田守

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 青空にぎゅっと手を握りあう主人公のポスターを見て、童心に帰って一夏の冒険をしようとワクワクしながら映画館に行きました。

 

しかし、今回の細田守作品は、今までのそれとは一味違っていたのでした。

 

ささやかだけど大きなスケールの物語

 本作の舞台はとある一軒家。主人公の男の子(くんちゃん)の精神的成長を描く物語なのですが、なんと舞台は全て彼のお家の中です。実は主人公がそこから出ることはありません。おそらく細田守の映画史上最も狭い舞台の作品と言えます。

 しかし、物語のテーマは受け継がれる命のつながりと家族の絆の物語。主人公のくんちゃんは自宅の中にある不思議な中庭で、自分とお姉ちゃんと、お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、ひいおじいちゃんの命のバトンのつながりを感じる体験をします。この不思議な体験が細田守らしいダイナミックで個性的でファンタジックな作画で描かれます。

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命の物語はきっと大人向け

 家族のつながりの物語は大変わかりやすく、大人から子供まで楽しめると思いますが、このテーマは実は少し大人向けの内容なのかな、と思いました。ひいおじいちゃんのプロポーズや、自転車の練習をするシーンで本当に涙を流せるのは、ある程度人生を経験した大人たちだと思います。

 ド派手な展開や、夏の大冒険は用意されておらず、ある家族の命のつながりを丁寧に描いて行きます。「夏休みの始まりに…。」と期待した、冒険はできませんでしたが、道徳の教材で扱う「命のバトン」のようなお話を見せていただき、自分の今までを振り返りながら、大切な人を大切にしようとか、自分自身を大切にしようとか、そういうことを考えることができました。

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全ての人に起こるであろうファンタジー

  触れ込みでは、主人公の男の子が女子高生に成長した未来の妹に出会うファンタジー映画でした。確かに、主人公が彼の家族の歴史に触れる表現は映像的にも脚本的にもファンタジックな面白みがありましたが、この映画で何よりファンタジックに描かれていたのは、家族のつながりと巡り合わせの奇跡でした。

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それは、

きっと僕らの人生にも起きている、

ファンタジー