「万引き家族」〜是枝監督の集大成はまさに現代の日本映画!うまい!切ない!面白い!
話題作なのに無視してきた是枝監督最新作をやっと観てきました。もうすぐ公開終了なのでギリギリセーフです!感想は素直に面白かった!キャラクターも、ストーリーもまっすぐ直球ストレートで面白いし、きちんとメッセージがあって、撮り方や台詞回しがうまくって。邦画の中には「テレビでしろよ!」っていう作品も大きなかで、こういうのを「いい映画」っていうんだろうなぁ、と思いました。
評価:4.0(面白い映画)
======================
公開:2018年(日本)
監督:是枝裕和
キャスト:リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優、他
======================
※ レビューにネタバレを含みます!
是枝監督が描き続けたテーマの集大成
是枝監督は「家族」についての作品を描き続けています。「誰も知らない」や「海街diary」、「そして父になる」はテーマそのものが家族である作品だし、「3度目の殺人」でも、「家族」というテーマが物語のポイントになっています。そして、そのどれもが、何かが普通ではない家族のあり方から、家族とは何かを考えさせるストーリーになっています。
そう考えると、今回の「万引き家族」はその集大成とも言うべき作品。間違いだらけの家族の中に垣間見える理想の家族のような風景に、私たちは何を感じればいいのでしょうか?
日常を描いているようで、おとぎ話のようなお話
映画を見ていて、終始不思議な感覚を味わっていました。なぜなら、この映画は現代の日本をシビアに描いているようで、その主人公たち家族があまりに現実離れしすぎているからです。この点が受け入れられなかったという人も少なからずいるようですが、、、。
貧困、殺人、窃盗、風俗、詐欺、誘拐、虐待などなど、現代社会のあらゆる問題がひしめき合う、現代の日本の縮図のような「万引き家族」。あまりに現実離れしたこの家族は現代社会の異物のようであり、また、都会の片隅に突如現れた傷ついた心のオアシスのようでもあります。
そんな幻想のような家族に温かさや疑問を感じながら映画を見ている私たちは、最後の最後にその家族の崩壊を見届けることになります。間違いだらけの家族が消え去った後、残ったのは私たちの周りにもある普通の日常でした。あるべき人があるべきところへ帰ったその光景は、間違いが正された然るべき世界である反面、オアシスが消え去った砂漠のようでもありました。このおかしな家族とシビアで現実的なテーマの対比が絶妙だと思います。
パルムドールにふさわしい「うまさ」があった
ストーリーもわかりやすく、キャラクターも魅力的で、メッセージもはっきりしている。大変観やすくわかりやすいこの映画ですが、当然、パルムドール受賞の理由はその内容の面白さだけではありません。この映画には3つの「うまさ」がありました。
無駄のない緻密な脚本の「うまさ」
「なんて無駄のない高密度な映画だろう!」現代の日本の日常を描いているようなこの映画、しかし、一見くだらないコメディのようなシーンでも、出来事の1つ1つが物語をクライマックスに導くために必要不可欠な要素となっています。それだけでなく、セリフの1つ1つに登場人物の人となりを表す言い回しがあり、無駄な台詞すら1つ足りともないのではないかと思うほどの緻密な脚本。また、ワンカットワンカットが原案と脚本も手がけた是枝監督のキャラクターへの愛情であふれていて、大変絵になる。素晴らしい映画でした。
実力派俳優陣の「うまさ」
観ているだけで安心できる名前のある役者陣で構成されたこの家族。この映画にはセリフがなく、表情や間の取り方で語るような演技が大変多いように感じました。そして監督もまた、彼らの中からこのキャラクターたちを引き出すために、あの手この手で役者陣とぶつかったようです。役者の演技力と監督の手腕が炸裂した、やはり素晴らしい映画でした。
余白の「うまさ」
この映画はわかりやすい内容のストーリーでありながら、非常に考えさせられる作品です。その理由は物語に散りばめられた「余白」にあります。治はなぜ拾ってきた子に自分の本名をつけたのか?亜紀はなぜ妹の名前を風俗の源氏名にしたのか?2人の子どもは本当の家族の元で幸せになれたのか?おばあちゃんと亜紀のつながりはお金だったのか?そして、「万引き家族」は一体何でつながっていたのか?
この、あえて語られない「余白」が物語の深みであり、私たちが考えても考えても答えを出せない、現代社会の疑問符なのです。
どこを取っても隙のない、
素晴らしい日本映画に、拍手!